1.なぜ電気を導線なしで送れるのですか

答)図1のようなトランスは鉄心の周りに1次コイルと2次コイルが巻いて有ります。1次コイルに交流を流すと2次コイルに電流が発生し、そこに電灯を繋ぎますと明るく点灯してエネルギーが送られたことが分かります。それは1次コイルが作った磁界が鉄芯中で変化するので、その変化によって2次コイルに電流が流れたからです。ここで鉄芯を取り除いても2つのコイルを近づけますとやはり同じことが起こり電灯が光ります。これは鉄芯のある時と同じように磁界がエネルギーを媒介したためで電磁誘導と呼ばれます。

    

図1トランス               図2コンデンサ

今度はトランスの代わりに電源と電灯の間にコンデンサを配置しましょう。やはり電灯は光ります。これは二つの極板間にできる電界がエネルギーを運んだためで、原理は静電誘導と呼ばれます。こういった現象はおおよそ2世紀も前から知られていたのですが、それを電力伝送に使おうという発想はなかったのです。まさにコロンブスの卵と言えるでしょう。

2.磁気共鳴とか電界結合とかの言葉を聞きますがどういう事ですか

答)さらに効率を上げるために上記のコイル結合でも、容量結合でも多くの場合回路を直列共振させインピーダンスを最低にして電流を最大にすることが普通です。前者は磁気共鳴、後者は電界結合としばしば呼ばれます。しかし用語の正確さを求めるならば前者は磁界結合共振、後者は電界結合共振と呼ぶべきでしょう。困ったことに最初にその原理を発表したグループが深く考えずにつけた名称が独り歩きしているという状況です。学問的にはまずいのですが、既成事実は強いものです。

 

図3磁気共鳴方式          図4電界結合方式

 

3.どの程度の距離を送れるのですか

答) 磁気共鳴方式の場合、おおよそコイルの寸法程度の距離ならエネルギー伝送効率は50%以上確保できます。コンデンサを用いる電界結合方式では効率はやや低く、極板寸法程度の距離ではその半分くらいです。より詳しく言いますと共振器の良さを表す無負荷Qが100程度であればこのような効率ですが、その値が増減すればそれに従って効率も増減します。即ち伝送効率の大きさは結合係数kと無負荷Qの積(kQ積)で決まります。もちろん伝送距離を増やすと結合係数の低下によってどんどん伝送効率は下がります。

なお電界結合の場合極板同士を接触寸前まで近づけた状態ですと横ずれに強いという特徴があります。ですから電界結合方式はしばしば非接触給電用に使われます

 

4.人間などが感電することはないのですか

答) 感電はしませんが問題はあります。我々の経験する感電は電子など荷電粒子が体内に侵入して細胞分子と衝突しそれらを麻痺させたり傷つけ破壊したりする現象です。それに対してワイヤレス給電では電子などが体内に侵入するわけではなく、体外の磁界、電界によって細胞分子がゆすられるだけですのでよほど電界・磁界が強くないと細胞は破壊されません。しかしゆすられる事によって人体、特に脳細胞がどのような影響を受けるかは未知な部分が多く、現在研究が進行中です。

 

5.送電している時、途中に邪魔物が入っても大丈夫ですか

答)大変問題です。挿入物の材質と大きさに依りますが最悪は大きな金属です。交流電界も磁界も金属に電流を流すためコイルや容量極板の数分の一くらいの寸法でも金属は発熱し共振周波数はずれてしまい効率は大幅に下がります。一方誘電体や磁性体の挿入は金属ほどの影響はないものの、それなりに効率の悪化を引き起こします。

 

6.壁越しでも送電できるのですか

答)出来ます。壁はたいていの場合誘電体とみなすことが出来るため、誘電損失の影響を受けにくい磁界結合共振を用いてきちんと設計すればほとんど損失の増大はありません。

 

7.水中でも送電できるのですか

答)水も誘電体ですから壁越し給電と同じことが言えますが、水は優れた溶媒である点に注意が必要です。溶け込む溶質およびその濃度によってイオン電導が複雑な影響を受けることはわかったのですがその理由は未解明です。

簡単に言えば壁越し給電同様共振器周辺の電界エネルギーを減らせば効率は上がりますが、海水のように高濃度のイオンが存在する場合非常に大きな損失を与えるため、共振器近傍の電界エネルギーをへらすだけでなく、最適周波数を選ぶなどの工夫を凝らして伝送効率を確保します。

 

8.磁気共鳴や電界結合で送電距離を延ばすことはできるでしょうか。

答)磁気共鳴で距離を伸ばすためにはコイル共振器を伸ばしたい方向にたくさん並べれば飛石状に電力が移っていく事で可能です。しかし伸ばした終端だけでなく、伸ばしている途中でも非接触で電力を取り出せるものでなければ有線で伸ばすのと同じですから意味はありません。なぜか途中で取り出すことを意識したシステムを見かけることがないのは不思議です。

さて上の例では1次元的に伸ばしていますが、2次元的、3次元的に伸ばすのは困難です。これらは当然終点に向かって伸ばすのが目的ではなく、2次元空間、3次元空間で無線給電をしたいという要求だから困難なのです。送電側のコイル共振器を大きくすれば給電範囲は増えますが、送電側の作る磁界強度はどんどん小さくなるために受電共振器との結合係数は下がり効率は低下します。低下を厭わなければ3次元給電としてカプセル内視鏡給電や、我々の水槽中給電などが有ります。

一方電界結合では磁気共鳴と結合の仕組みが異なる為送電範囲を大きくするのは比較的簡単です。送電側の電極を大きくしても受電側の小さな電極との結合係数はあまり小さくはならず、また平行移動してもあまり変わらないので送電効率はあまり下がりません。なぜそうなるかについて今はうまく説明できないため、今後明らかにしたいと思っています。

 

9.磁気共鳴方式と電界結合方式の特徴、弱点はどのようなものですか。

答)これまで述べたことと一部重複しますが、磁気共鳴はまず電界結合に比べると比較的遠距離給電が得意である事、そして何よりも大きな利点は2次側のグラウンドが不要なことです。ワイヤレス給電で1次側との共通グラウンドが要求されますとそもそもワイヤレスでなくなってしまう事が有りますのでこれは重要です。例えば#8で紹介したカプセル内視鏡や水槽中のロボット魚への給電は不可能となります。これは磁力線が必ず閉じていることと関係がありそうです。なお弱点は#8前半の1次元的な延伸が難しい事です。

それに関連して電界結合は2次側にも必ずグラウンドが必要です。さもないと浮遊容量の処理が必要となります。それは電気力線が自分自身では閉じることなく電荷で終端することと関係が有ります。電界結合の難点はまさにグラウンドの処理であり、我々のEV走行中給電もそこの解決に悩まされているのです。電気力線が手近の金属や地面に終端するために遠くまで伸びていかず2次側の電極に届かないのが電界結合の低い効率の理由です。一方利点は#8後半に述べた通り給電範囲を広げるのが容易である点です。

 

10.電波(マイクロ波)を使う送電は磁気共鳴を使う送電とどう違うのですか

答)高周波電源の出力を共振回路に導くと大きな電圧・電流が生じます。このとき共振回路から電源側を見たインピーダンスと共振回路インピーダンスが近ければ回路にエネルギーが効率よく送られます。回路の損失があまりなければ送られた電力は行き場を失い空間に出ていきます。これが電波です。

出ていく電波をうまく整形して1方向にそろえる機器がアンテナと呼ばれ、大きな面積を使えば使うほど効率よくそろえることが出来るので遠方までエネルギーを送るのに適しており、磁気共鳴方式よりはるかに長距離伝送が出来ます。

それに対して磁気共鳴方式などはコイルや電極板が作る電磁界を利用します。電源から出てきた電流が電線の周りに作る磁界や、電極板の周りに作る電界が近くの物体中の電子(広くは荷電粒子)を振動させることによってそこに新たな電流が生まれます。その電流の持つエネルギーを利用するのが磁気共鳴や電界結合と呼ばれるのです。

 

11.人工衛星を用いて太陽光発電を行い、それで得た電力をマイクロ波で地上に送るというシステム(SSPS)は効率や安全性の点で問題はないのでしょうか。

答)#8で述べたように送受アンテナの面積を大きくすればいくらでも遠方に高効率で電力輸送が可能なので、SSPSでは直径数kmのアンテナを用いて40000km離れた静止衛星から地上まで50%程度の効率で送電できます。それに加え太陽電池からマイクロ波への変換、地上でのマイクロ波から直流への変換の効率を加味すると全体で10~20%程度まで効率は下がりますが、もともと無料のエネルギーですのでエネルギーの無駄使いそのものはあまり問題にはならないでしょう.問題はシステムの建設経費とメンテナンス費ではないかと思われますが、ただその点も在来電力網と競争するのではなく災害時など緊急事態への対処や僻地、島嶼などと対象を限れば採算の概念から外されるのではないでしょうか

安全性に関しては、送るビームの電力密度を地球上で測った太陽光自身のエネルギー密度より下げていますので、長期にわたって浴びない限りは問題ないとされています。

 

12.ワイヤレス給電のキラーアプリは何でしょうか。

答)我々もそれを必死に探しています。キラーアプリとは「ワイヤレス給電無くしては実現できないもので、社会にインパクトを与えうる応用」と定義されるとすれば

(1)電気自動車への走行中給電

(2)カプセル内視鏡、人工心臓などへの経皮給電

(3)地下資源や、海底資源の探索、地震予知への研究

あたりではないかと考えます。もちろん我々もこれらの研究は進めていますが、現時点ではまだ実用には至っていません。不十分ではありますが途中経過の動画をホームページでご覧ください。今後おいおい改定せねばと思っています。

 

13.ワイヤレス給電の研究開発をやりたいのですがどこから手を付ければいいですか。

答)新しい研究を始めるのは敷居が高いものですね。私は長らくの間携わった電磁気応用の研究を土台にこの研究を始めてもうすぐ10年になりますので、初めての方にはご要望に応じて色々とお教え出来る事が有ります。

宣伝になりますが、もしお聞きになりたい事が有りましたら「お問い合わせ」でもお越しいただいての面談でもお受けいたします。弁護士風に初回の30分およびメールによるお問い合わせは無料といたします。それ以後は1時間きざみで代金を申し受けます。

 

これらの問題に関する筆者の見解に対してご意見のある場合は、どうぞ遠慮なく「お問い合わせ」コーナを利用してお送りください。検討の上、内容を改訂いたします。

代表取締役 粟井郁雄